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日経平均が下降トレンドに入る兆候を二つの曲線で見つける方法

ふたつの曲線とは次のことをいいます。

① 上に凸の曲線

株価は指数関数的に増えようとする一方で、必ず上下にゆらぎます。その変化の仕方を数式で表すと、

$$\frac{dx}{dt}=rx+vx\frac{dB(t)}{dt}\tag{1}$$

となります。$x$ が株価、$r$ は成長係数、$v$ はゆらぎ係数、$B(t)$ は日々のランダムな変化です。この式が株価 $x$ の瞬間、瞬間の変化を表しています。この式は確率微分方程式と呼ばれ、その積み重ねを計算することを微分方程式を解く(積分する)といいます。その結果が、

$$x=x_{0}\ e^{(r-\frac{v^2}{2})t+vB(t)}\tag{2}$$

です。時間が t だけ経過したときに株価がいくらになるかを教えてくれる式です(導出方法は 2023年1月23日付けブログをご覧ください)。$x_{0}$ は初期値。$r$(成長係数)、 $v$( ゆらぎ係数)、$B(t)$(日々の変化)の決め方は2020年4月21日付のブログ「コロナ・ショックによる株価下落の回復はいつか?」をご覧ください。すべてエクセルで計算できます。

この(2)式によって任意の初期値 $x_{0}$ から時間 $t$ が経過したときの株価を求めることができます。ここで、もしブラウン項の $vB(t)$ がなければ式 (3) となります。これが株価 $x$ が向かう基本的方向です。実際、株価 $x$ はこの式 (6) を中心として上下にゆらぎます。この中心線のことを $µ$ 線と呼びます。

$$x=x_{0}\ e^{(r-\frac{v^2}{2})} \tag{3}$$

$µ$ 線からのゆらぎの度合いは式 $(4)$ で表せ、これが $v$ 曲線です。$v$ 曲線は必ず上下に凸の曲線となることが特長です。

$$x=x_{0}\ e^{(r-\frac{v^2}{2}+□v\sqrt{t})} \tag{4}$$

□の中に入る係数がマイナスのときは下降トレンド、プラスのときは上昇トレンドです。

 

② 下に凸の曲線

(数式はソーネット教授の著書 “Why Stock Markets Crash” Critical Events in Complex Financial Systems から引用しています。)

下に凸の曲線(ドラゴン・キング曲線)は二つの要素から産まれます。ひとつ目の要素は「べき乗則」です。同法則は英語で Power Law ですのでその時間関数を $F_{pow}(t)$ と表現します。

$$F_{pow}(t)=A+B(t_{c}-t)^m \tag{5}$$

$t_{c}$ はクラッシュする時間です。式 (5) は $t_{c}$ に向かってグググっと立ち上がる「なぎなた」のような曲線になります。

二つ目の要素は波です。 $t_{c}$ に向かって波の間隔が狭くなるというのが同教授の理論で、その様子は対数周期で表現することができます。対数周期は英語で Log Period といいますので、その時間関数を $F_{lp}(t)$ と表現します。アップダウンはコサイン波で表します。波の形を自由に調整できるよう係数 $C$、$ω$、$T$ を用意します。

$$F_{lp}(t)=1+C\cos(ω\log((t_{c}-t)/T)) \tag{6}$$

上のふたつの要素、 $(5)$ 式と $(6)$ 式を掛け合わせます。

$$F_{lp}(t)=A+B(t_{c}-t)^m[1+C\cos(ω\log((t_{c}-t)/T))] \tag{7}$$

この $(7)$ 式がソーネット教授が命名したドラゴン・キングの出現を予測する数式で、曲線は下に凸になります。(2021年2月15日付けのブログ「株価暴落前の数学的兆候 – ソーネット教授のドラゴン・キング理論(前編)」も参照してください。)

 

さて、ここで昨年来の日経平均の動きに、上記のふたつの曲線を当てはめてみましょう。下図をご覧ください。

日経平均(2021年1月4日~2022年2月22日)の v曲線(上に凸の緑の曲線)とドラゴン・キング曲線(下に凸の紫の波線)横軸の単位:365日=1.0
r=4.2×10-4, v→ 図中に表示(式 (4) の □ の中に入る数字)
A1=31,000, B1=-7,200, tc1=2021.122, ω1=5.7, m1=0.35, T1=1.15 (2021/1/2~2021/2/16)
A2=32,500, B2=-12,000, tc2=2021.695, ω2=4.0, m2=0.35, T2=1.15 (2021/8/20~2021/9/13)

 

2021年1月4日から同年2月16日までの値動きと、同年8月20日から同年9月13日までの値動きは、上に凸の $v$ 曲線よりも、下に凸のドラゴン・キング波線の方が実際の株価をよく近似しています。そして、注目すべきはドラゴン・キング曲線が現われた後に、日経平均が下降トレンドに入っていることです。ソーネット教授はドラゴン・キングが現われると株価がクラッシュすると説いておられますが、ズームアウトしてみると「下降トレンドへの移行ポイント」として捉えることもできそうです。

 

引き続き検証していきましょう!

 

以上

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