株価に限らず、通貨でも、金属でも、クラッシュや破壊が生じるクリティカルなタイミングを
一方、ディディエ・ソーネット 教授(フランス人、スイス連邦工科大学チューリッヒ校、起業家リスク議長)はその理論をアリアン・ロケットの主要部品の破損診断に応用して成功した科学者で、複雑系理論をベースにべき乗則と対数周期を組み合わせた数式で
フィナンシャル・マーケットに時折現れるドラゴン・キング
Didier Sornette TEDGlobal 2013 ”How we can predict the next financial crisis”より
では早速、数式をみていきましょう。(数式は同教授の著書 “Why Stock Markets Crash” Critical Events in Complex Financial Systems から引用しています。)
まずべき乗則ですが、同法則は英語で Power Law ですのでその時間関数を
クラッシュの代表例として1987年10月のブラックマンデーを選びます。グレーの破線はエクセルで自動表示できる指数近似曲線です。オレンジの曲線が
次に対数周期ですが、これは
アップダウンをコサイン波で、波長の時間変化(短縮化)を対数で表していますね。図1の紫色の実線が
図1
A= 412, B = -158, m=0.4, C = 0.3, ω = 9.0, T = 1.0, tc = 1987.82(1年=1.0)
そして、クラッシュにいたる株価の推移は
です。この
図2
A= 412, B = -158, m=0.4, C = 0.075, ω = 9.0, T = 1.0, tc = 1987.82(1年=1.0)
ランダムに動いていると思っていた株価が、なんと一定の関数で近似されてしまうとは驚きです。しかも、二年前からクラッシュへの歩みがはじまっていることを示しています。
さて、すでにお気づきになられた方もおられると思いますが、式
仮に今、我々は 2019年末にいるとします。その時点で S&P500 は 2018年末に比べ 30% 以上値上がりしていました。そこで、式
図3
A= 3,820, B = -1,150, m=0.77, C = 0.03, ω = 15.5, T = 0.58, tc = 2020.12(1年=1.0)
さて、その後、実際の株価はどう推移したでしょうか。図4をご覧ください。2020年2月19日に 3,386.10 の最高値を付けたあとクラッシュしました。
図4
A= 3,820, B = -1,150, m=0.77, C = 0.03, ω = 15.5, T = 0.58, tc = 2020.12(1年=1.0)
過去のデータを使うと先の結果がみえているため恣意的にパラメーターを操作したのではないかと思われても仕方がありません。そこでソーネット教授は予測結果に鍵をかけておき、あとで検証できるようにしました。さらには FCO (Financial Crisis Observatory) というバブルをリアルタイムで観測するプラットホームを創設してその予測状況を公開しています。以下のウェブサイトご覧ください。
ちなみに、最新の報告書(2021年2月1日付)によると S&P500 (Broadcastingセクター) は昨年の 10月(図5の緑の縦線の右側)からバブル期に入っていると予測されています。
図5
つづく
<追記>
計算の詳細にご興味のあるかたは、対数周期曲線 – Excel をご覧ください。
「後編」は、2021年2月15日付のブログ 、2021年3月14日付のブログ をご覧ください。
<参考文献>
Didier Sornette, Why Stock Markets Crash, Critical Events in Complex Financial Systems, Princeton University Press, 2003
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