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一銘柄でリスク分散投資をする方法 – パート2

2020年6月14日

はじめに

パート1では最も安全な投資手法である米国の株式指数(S&P500)連動型ETFをバイ&ホールド(買っては保持)する方法をご紹介しました。ただ、バイ&ホールドは投資リターンを常時資金化したいひとには機能しないため、別の安全な、しかも専門知識や予測を必要としない方法を探し出す必要があります。一般的には危険といわれている一銘柄への集中投資といういわば逆説的な手法によってそれを可能にするのが「一銘柄におけるリスク分散投資」ですが、パート1で簡単なシミュレーションをしてみただけでもいろいろな疑問が生じました。パート2ではそれら基本的な論点についての理解を深めます。そしてパート3で具体的な手法を展開します。

 

一銘柄分散投資に関する基本的な論点

パート1の「まとめ」①~➅の順番で論点を整理します。

  • 銘柄は何を基準に選ぶのか?

「買い」だけでなく「売り」から入れるようにするためには信用取引をする必要があります。まずは証券会社に信用取引口座を開設して同取引ができる銘柄を選ぶ必要があります。口座の開設は手続きをすればよいだけでいいですが、銘柄はどのように選べばいいでしょうか。

「買い」「売り」のどちらから入るにしても株価が変化しないことには利益は出ません。よって、まずは変化率(前日と比べ株価が何%変化するか)に注目します。変化率を評価するためにはその基準が必要です。TOPIXの場合ですと、過去3年間の対前日変化率の平均は上昇が0.71%、下降率は0.75%です。米国S&P500の過去60年間の変化率の平均は上昇が0.65%、下降が0.67%です。(詳細は2020年4月22日付のブログをご覧ください。) 少なくともこれらの基準を上回るような変化率をもつ銘柄に投資するのが合理的と判断できます。

 

  • ポジションをいくつもつのが妥当なのか?

信用取引では手持ち資金の三倍までポジションを持つことができます。百万円の資金があれば三百万円までポジションを持てます。一株千円の株であれば三千株です。よって、ひとつのポジションを一千株にすると決めた場合、三ポジションが限度になります。五百株にすれば六ポジション持てます。当然、一千株単位のポジションから生み出される利益は五百株単位の二倍です。ポジションの数は次の論点である「ポジション間隔」に密接に関係します。

 

  • ポジションの間隔はどの程度が妥当か?

図1において朱色の領域が買いポジション、青色の領域が売りポジションです。株価がそのいずれかの領域に入ると利益が出ますが、外れいると利益が出ません。ポジションは一度決済すれば空きますからその時点で必ず隙間ができます。そしてできる隙間の大きさは決済するポジションが他のポジションからどのくらい離れているかによります。

選んだ銘柄の一日の平均変化率がたとえば1%だとします。もし、隙間の間隔が3%であったとすれば連日上昇、または下降したとして利益がでる範囲に株価が移動するのに三日かかります。上昇と下降を3:2(又は2:3)の割合で繰り返したとすると、1%動くのに五日かかりますから、利益圏に移動するのに15日かかります。5:4(又は4:5)であれば27日かかります。よって変化率1%の銘柄でポジション間隔を3%にしたら、利益の出せない日が一ヵ月くらい続くこともあります。

図1

逆に隙間を1%にすると変化率1%の株価はあっという間に利益圏に入ります。しかしながら②でみたように持てるポジションには限度があります。図2をご覧ください。D1で買いと売りのふたつのポジションからスタートしたとします。D3で売 D1を決済して、隙間を買 D3と売 D3で埋めます。D7で売 D3を決済してできた隙間を買D7と売 D7で埋めます。このようにしていれば隙間は完全に埋まり株価がどう動こうが絶えず利益圏に入りますが、D7の時点ですでに四つのポジションを使っています。そして、その四つのポジションをもつための資金は一ポジション千株として3,350,000円{買D1:1000円+買D3:850円+買D7:750円+売D7:750円)x千株}です。もし、手持ちの資金が3百万円しかなかったとしたら、四つ目のポジションは持てません。

図2

以上より、とるべきポジション間隔は広過ぎると機会損失が増える一方で、狭すぎても資金を使い果たしてしまい、結局は機会損失が増えるということが分かります。同時に、どこかに「最適な解」があるはずだということも想像できますし、それが各銘柄ごとに違うはずだということも予想できます。

 

  •  含み損は発生するのか?

図3においてD2では売りポジションが50円の利益を出しています。D4においては買いポジションが100円の利益を出していますが、売りポジションでは300円の含み損が発生しています。つまりD4では合計して200円の含み損が発生していることになります。同様にD5からD8まで株価の動きに関わらずずっと200円の含み損をかかえることになります。

D8で新たに売りポジションを入れたあとは、D8~D10で売りポジションで利益が発生し、D11~D12では買いポジションが利益が出ていますが、反対のポジションでは絶えず含み損が発生しています。

図3

D13までの含み損の推移は表1のとおりです。もし千株単位のポジションを組んでいるとすれば、D13時点で35万円(△350円 x 1000株)の含み損をかかえていることになります。また、この手法を続ける限り大なり小なり含み損から解放されることがないことも自明です。

表1

 

  • 利益をどのタイミングで実現するのか?

図4において利益を実現するチャンスはD2からD4まで毎日あります。D4もスルーしてさらなる利益増を期待するという選択肢もありますが、反対にD5で下落した場合はD4で決済しておけばよかったと後悔するはずです。平均変化率が1%の銘柄であれば、毎日平均1%、上下どちらかに動きますが、利益が最大化するタイミングがいつ来るかは誰にも分かりません。しかしながら、③のポジション間隔同様、どこかに数理的な最適解があるはずです。

図4

 

 • 株価が暴落してもこの手法は機能するのか?

2020年の3月に新型コロナ・ウイルス感染症の蔓延をきっかけとして世界の株価は同時に暴落しました。このようなことは過去にも何度か起こっています。1929年のウオール街大暴落、1987年のブラックマンデー、2008年のリーマンショックです。(詳細は2020年4月21日付ブログを参照してください。)バイ&ホールド法は長期投資を前提していますのでたとえこのような暴落があったとしても時間が解決してくれますが、常時資金化を前提としている投資家は暴落の影響をもろに受けざるを得ません。不幸にも本年3月、リーマンショックから12年を経て世界の株式市場は今世紀二度目の暴落を経験することになりました。どんな投資手法を駆使しても暴落を無傷で切り抜けることなどできないようにも思えます。そのようなときでさえ利益を出し続ける手法が存在するのでしょうか。ここで議論している「一銘柄リスク分散投資」は暴落の中でも果たして機能するでしょうか。今がまさにリアルタイムでそのパフォーマンスを検証する絶好のタイミングです。

たとえ、これまでの議論にもとづきその実践結果が満足のいくものであったとしても、一度の暴落で大損失を出してしまったら安全な投資手法だとはいえません。暴落はまた必ず起こりますし、それがいつかも分からないからです。

パート3では、いよいよその具体的な手法について議論をしていきます。

つづく

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