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一銘柄でリスク分散投資をする方法 – パート1

2020年6月13日

はじめに

複数の銘柄を組み合わせることで投資リスクを下げることができるとよくいわれます。しかしながら、元手が一千万円あったとして、リスク分散投資で年利5%の実績をあげたとしても、実額で50万円です。定期預金に比べたら立派な成績ではありますが、これでは家族で一回海外旅行に行けるくらいです。元手が一億円あれば年間5百万円ですが、普通のサラリーマンで一億円の余裕資金をもっているひとはまずいません。そもそもどのような銘柄に分散投資すればよいのか、素人には分かりません。分散投資なら忘れたころにやってくる暴落にも耐えられるのでしょうか。本日からシリーズで、一銘柄で損失リスクをコントロールしながら分散投資以上のリターンを産み出す手法を理論的かつ実践的に考えていきます。

バイ&ホールドのメリットとデメリット

株式投資手法の中で最も安全なもののひとつに、買っては保持、買っては保持する「バイ・アンド・ホールド」方式があります。投資対象として一般的なものはインデックス連動型ETFです[1]。図1は1950年から今日までのS&P500の推移です。S&P 500(Standard & Poor’s 500 Stock Index)はアメリカの代表的な株価指数で、ニューヨーク証券取引所やナスダックに上場している銘柄から代表的な500銘柄の株価を基に算出されます。指数関数的に増えているのが一目でわかります。1950年1月3日の株価は16.66米ドル、2020年5月29日の株価が3,044.31米ドルですから、70年前のおよそ180倍、年利は17%を超えています。

図1

バイ&ホールドとは、投資間隔と投資額をおおよそ決めておき、その時の株価が高値であろうが低値であろうが買い続ける手法のことをいいます。現在価値と含み(未実現)利益は次の計算式によって得られます。

現在価値(評価額)= 現在の株価 x 持ち株数 ・・・①

含み(未実現)利益 = (現在の株価 - 買値の平均)x 持ち株数 ・・・②

よって、現在の株価が高ければ高い方が、買値の平均が低ければ低い方が、そして持ち株数が多ければ多い方が、含み利益が大きくなります。この投資手法のよいところは、まったく経験もスキルも必要がないことです。自分が決めたタイミング(たとえば年二回のボーナス時)で、決めた金額(たとえば一回20万円)で買い続けるだけです(図2参照)。

図2

図3は平均年利6%のETFにバイ&ホールド方式で長期投資したときの資産価値の推移です。年二回、ボーナス時に5~30万円の投資をしたとして、50年後に資産価値がどうなっているかを示しています。

図3

バイ&ホールド法は長期継続を前提としているだけに都度現金化して日々の生活費の足しにしたり、娯楽やレジャーに回したりしたいひとには向いていません。また、病気や事故によって楽しみを実現することができずに死んでしまうリスクがあるのもこの手法のデメリットです。

一銘柄分散投資

 株価はその企業の業績や所属する業界のトレンド、為替、金利などから絶えず影響を受けます。そのような要素を取り込んで近未来の株価を計算する方法(ARモデル、VARモデル、MTVモデルなどの定常時系列モデル、トレンドや循環変動を加味した非定常モデルなど[2])も研究されてはいますが、それらはあくまで数理論的な予測に過ぎません。予測である限り当たらないこともあります。しかも、突発的な気候変動や地震、伝染病の蔓延などは計算に取り込むことすらできません。

よって、「株価は予測できない」が大前提となります。予測できないのであれば予測をしなくてもよい方法を考える必要があります。しかも、株価が上がっても下がっても利益がでるようにしておかなければなりません。

投資リターンを常時資金化したい場合は短期間でも利益を出し続ける必要があります。バイ&ホールドは株が上がることを前提にした投資手法ですが、それは長期投資であるからこそ成りたちます。短期間で利益を出し続けたいのであれば上がっても下がっても利益を出さなければなりません。売値が買値を上回れば利益が出ますから、上がり相場のときは買いから入り、下がり相場のときは売から入れば利益がでます。ここで最大の問題は、上がり相場なのか下がり相場なのかを誰も予測することができないということです。

では、「買いポジション」と「売りポジション」を同時に持ったとしたらどうでしょうか。これであれば株価が上がろうが下がろうが、必ず一方のポジションで利益を出すことができます。具体的には、

Day 1 (以下D2、 D3・・・と略します) で1000円で以下の両ポジションを同時に持ちます。

買いポジション(D1): 1000円

売りポジション(D1): 1000円

以下、「買いポジション」、「売りポジション」という表現は省略し、単に「買」、「売」と表記します。

D2で950円となったときの損益は

買(D1): 1000円 → - 50円

売(D1): 1000円 → +50円

合計: ±0円

となります。株価が50円下がったので買(D1)は50円の損失が出ますが、売(D1)は50円の利益がでます。合算すると±0円です。株価が逆に50円上がった場合は買(D1)が50円の利益、売(D1)50円の損失となりますので、合わせて±0円です。よって、このままですと上がっても下がっても±0円が続きます。では、ポジションをもうひとつ増やしてみます。

D3で1200円の買いポジションを追加します。

買(D1): 1000円 (D1)

売(D1): 1000円 (D1)

買(D3): 1200円 (D3)

D4で1300円になったとします。各ポジションの含み損益は、

買(D1): +300円(1300円 – 1000円)

売(D1): - 300円(1000円 – 1300円)

買(D3): +100円(1300円 – 1200円)

合計: +100円(400円 – 300円)

となり今度は利益が出ました。時系列でそれぞれのポジションの推移が分かるように表現すると表1のようになります。背景色は朱色が「買いポジション」、青色が「売りポジション」です。

表1

株価の動きとポジションの様子を図示すると図1のようになります。株価が朱色または青色の領域に入ると利益がでます。外れると損失がでます。D4時点では二つの買いポジションで利益が出ている一方で、ひとつの売りポジションで損失がでていることが視覚的に分ります。

図1

「損益」はその日に決済したときにでる利益、または損失です。もし、取引の単位が千株で、D4に三つのポジションを同時に決済したら10万円の利益が出ます。もっとも、D4で1300円に上がったから利益が出るのであって、もし1000円に下がたら、200円の損失になります。しかしながら、ここまでの単純なシミュレーションにおいて、買いと売りのポジションをうまく組み合わせることによって利益を出せるかもしれない、ということがおぼろげながらに分かります。

ところで、時価1000円の株を千株買うのに必要な資金は百万円です。最初に買いと売りを同時に建てていますので、それぞれ百万円、合計二百万円の資金が必要です。さらに買いポジションの追加に百万円、合計三百万円の投資です。複数の買いと売りのポジションを組み合わせるといってもポジションを増やすには資金も必要ですから、持てるポジションの数もおのずと限度がありそうだということも分かります。

さて、D3における各ポジションと含み損益は以下のとおりでした。

買(D1): 1000円

売(D1): 1000円

買(D3): 1200円

D4で1300円になったときに、D1の買いポジションのみを決済してみましょう。1000円で買ったものが1300円で売れますから300円の利益が現金化されます。決済するとそのポジションはなくなりますから、決済後のポジションは売(D1)と買(D3)のふたつになります。では、引き続きD8まで、株価の推移をみてみます。図2をご覧ください。

図2

株価はポジションのない空間を推移しています。これでは利益を出せません。よって、この空間をもうひとつのポジションで埋めておけばよいということに気付きます。D8で売りポジションを入れると図3のように隙間がなくなり、株価がどう動こうと利益が出るという理想的な状況になります。

図3

その後については、「上がり基調」と「下がり基調」の二通りをみていきます。まずは上がり基調の場合です(図4)。

図4

D1からの損益の推移は表2のとおりです。D4で決済した買(D1)は太枠で囲ってあります。太字の300が実現利益です。D12の時点でポジションは売りが二つ、買いが一つの計三つです。D12では二つの売りポジションは損、買いポジションのみが利益を出していて、損益の合計は380円のマイナスです。

表2

では、次にD8以降が下がり基調の場合をみてみましょう(図5)。

図5

損益の推移は表3のとおりになります。

表3


D12では、二つの売りポジションが利益を出し、買いポジションが損を出して、合計で150円のプラスになっています。

まとめ

ではここまでで分かったこと、分からないこと、疑問点などを整理します。

① 株価の上昇には「買いポジション」、下降には「売りポジション」が利益を出してくれるので株価の予測は不要である。

② ポジションのない空間からは利益は産まれないが、ポジションを持つには資金が必要(持てるポジションの数には限度がある)。

③ ポジションとポジションがどのくらい離れたらその隙間を新しいポジションで埋めるべきかが分からない。

④ どのようにポジションを持ったとしても株価が変動する限り絶えず含み損をかかえることになる。

⑤ 利益をどのタイミングで実現するかが分からない。たとえば、買(D1)はD4で利益を実現したが、D3でも利益を実現できるし、D4もスルーできる。

➅ 株価が暴落してもこの手法は機能するのか?

パート2では、これらの不明点、疑問点をひとつずつ解き明かしていきます。

つづく

脚注

[1]バートン・マルキール、 「ウォール街のランダム・ウォーカー 株式投資の不滅の真理」 、2016年3月

[2] 津田博史、「株式の統計学」、2017年8月

PDFはこちらから → 一銘柄投資 パート1

 

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